豊かな自然が残る場所、ガンガラーの谷。
数十万年前は鍾乳洞だった場所が崩れてできたこの谷は、約1万8000年前に古代人が生きていた居住区としての可能性が高く、いにしえの時代から人類が暮らしていたといわれる場所。
沖縄にいくつもあると言われるパワースポットの中でも代表的な場所のひとつです。
ガンガラーの谷には、
- 大主(ウフジュ)ガジュマル
- 種之子御嶽(サニヌシーウタキ)
- 武芸洞
などの見どころを巡る、豊かな自然が残る森の中を歩くことのできるツアーがあります。
そのツアーに参加してみたところ、そこでの体験は感動的でおそらく今後忘れられないものとなりました。
ケイブカフェからウフシュガジュマルやサニヌシーウタキを巡る神秘的なツアー
ニコニコレンタカー那覇前島店で車をレンタルした僕ら夫婦は、弁当で腹ごしらえし、訪れたいと考えていた「ガンガラーの谷」へ向かうことにしました。
ガンガラーの谷は沖縄県南城市玉城前川202にあり、那覇前島から車で30分強のところにあります。
レンタカーで出発!
20分ほど車を走らせると自然の多い景色になってきます。
ガンガラーの谷でのツアーは出発時間の決まった定員制となっています。沖縄に向かう3日ほど前に僕らは予約しておきました。ウェブから予約できるので簡単です。
料金は2,200円。
10時、12時、14時、16時の4回が出発時間となっています。日によっては増発便がでているようですので上記からご確認ください。
僕らが予約したのは10時。10分前までの集合が必要です。
美しき洞窟のテラス ケイブカフェ
ガンガラーの谷は観光施設「おきなわワールド」の向かいにあります。
駐車場に車を止め、ガンガラーの谷の入り口方面を見ると、ガジュマルの木とベンチが並べられた空間が広がっています。
注意点として、ツアーは約1時間20分ですがこの先にトイレはありません。写真左の白い建物がトイレなのでここで済ませましょう。
入り口に向け歩いて行くと下りの道になり、奥に異世界のような景色が広がっているのが見えます。
ガンガラーの谷の入り口にあるケイブカフェです。なんとも素敵な景色に夫婦2人ではしゃいでしまいました。綺麗すぎる。
ガンガラーの谷の受付もこちらでおこないます。大きく深く開いた洞窟へと入っていきます。
この辺りからすでに植物の力が強いように感じます。エネルギーが満ち溢れている、そう感じる空気。
中に入り天井を見上げると、突き出した岩が特徴的で不思議な雰囲気を醸し出しています。
実はこの洞窟は天然の鍾乳洞。これらはすべて鐘乳石なんですね。
そこに作られたのがケイブカフェなのです。まさにここだけにしかないカフェ。
カフェでは飲み物やアイスクリームなどがいただけます。カフェだけなら入場無料で利用できます。おすすめ。
なお、ケイブカフェでは、写真展やライブ・貸切パーティーなどもおこなわれるそうです。
ツアー開始の時間になるまで、カフェの中を見て回ります。
ちょっとふざけた写真になりましたが、このお面の髭もじゃの方が重要人物。この方、港川人という約2万年前に実際にこの地に生きていた旧石器時代の人類だというのです。
沖縄県南部の石灰岩採石場で、1970年にフィッシャーと呼ばれる岩の割れ目で化石人骨として発見されました。
ガンガラーの谷にある武芸洞は港川人発見場所から近く、約7000年前の土器や約3000年前の人骨が発見されたりと、今現在でも発掘調査が続けられています。
「サキタリ洞遺跡」人骨と石器がセットは国内最古、貝製の針出土は世界最古
サキタリ洞遺跡(このケイブカフェ)でも、約2万年前(旧石器時代)の地層から貝殻のビーズ(装飾品)や道具・人骨が見つかっておりまして。
国内では旧石器時代の遺跡からそれらが見つかるのは初めてのこと。人骨と共に人々が使っていた道具が発見されたのも国内最古の例とのことです。
また、世界最古となる2万3000年前の貝製の釣り針が出土したと2016年9月19日に沖縄県立博物館・美術館から発表がありました。釣ったとみられる魚の骨も出土したそうです。
2万3000年前……想像しようにも及ばないほど昔ですが、そんな時代から釣り針を用いて魚やカニを取っていたとは驚きです。
数万年前に古代人が過ごしていたであろう場所で過ごす時間は、なんとも神秘的な感じがするのでした。
風景も空気も、綺麗。
ガンガラーの谷を体感するツアーへ
さて10時となり、ガイドの方に案内され、ガンガラーの谷の入り口近くに設置されているステージに置かれた椅子に座ります。
目の前に広がる美しいケイブカフェの景色を眺めながら、ガイドさんがするツアーの説明を聞きます。
ガンガラーの谷は、数十万年前までは鍾乳洞だった場所。その天井が崩れ、豊かな自然が残ったところをツアーでは歩くわけです。
これから歩く場所も、今いるケイブカフェも大昔は水が流れていたと考えると、その場に身を置けること自体に感動します。
さて、ガイドさんの説明が終わるとツアーの開始です。参加者は20名ほどだったと思います。
ケイブカフェから外にでる階段の横にも発掘調査の跡があります。
2万年前のものであるカニの爪が大量に見つかり、同じ場所から人骨も見つかったことから、ここで人類が生活していたのがわかったそうです。
ガンガラーの谷への入り口に近くにある鐘乳石。
わかりづらいですが、写真中央にある突起は以前に折れてしまった鐘乳石で、40年近くをかけて1cm程度になったとのこと。これを見ると、他の鐘乳石がどれほどの歳月をかけて今の形になったかを意識させてくれます。
外に出るとそこはもう別世界。生い茂る緑が迎えてくれます。
歩行距離約1㎞、約1時間20分のツアーの始まりです。
亜熱帯の豊かな自然。
さまざまな樹木がたくましく自由に枝葉を広げています。密林のようではあるのですが、空気は蒸しているというよりは清らかな感じがします。
このツアーではタンブラーに入ったさんぴん茶(ジャスミン茶)を渡してくれます。自然の中で飲むお茶は身体に沁みるようにうまい。
いろいろな植物があるなかでも、ひときわ大きな葉を持つクワズイモがよく目につきます。
梅雨だということもあり、このツアー中もなかなかの雨の降り。葉に溜まる水が綺麗です。
しばらく歩くと、ガイドさんが立ち止まり説明を始めます。
その傍らには背の高い竹。世界最大の竹で、ジャイアントバンブーというそうです。
ガイドさんと比べるとそのスケールがわかるでしょう。沖縄の在来種ではないそうですが、巨大な竹は迫力があります。
ツアーは川沿いに歩いて進んでいきます。
カッパは着ていましたが雨に濡れます。しかし、雨に濡れることが気分の悪いものではなく、むしろ心身が浄化される気持ち良さを感じます。
写真では小さくわかりづらいのですが、対岸の崖に動物の前歯のようなものが見えます。
その部分が実は鐘乳石で、今歩いているところが鍾乳洞であったことの証明になっているとのこと。
僕らは昔は水が流れていたところを歩いているんだ。
時折、頭上を越えていくような大きなガジュマルの木があります。
幹から地上に向けて垂れているのは気根。この気根が徐々に幹などに複雑に絡みついてこういった姿になっていくのです。
ガジュマルの古木には妖怪キジムナーが宿っていると云われています。キジムナーと聞くと僕は水木しげるの描いたキジムナーが思い浮かびます。
イキガ洞とイナグ洞のある聖地 種之子御嶽(サニヌシーウタキ)
ガンガラーの谷には、琉球王朝の時代から地元住民に信仰され続けてきた聖地があります。
そのひとつが、イキガ洞・イナグ洞という2つの洞窟一帯の種之子御嶽(サニヌシーウタキ)です。
この2つの洞窟は来訪者が祈りを捧げる御願所(ウガンジュ)となっている聖地。
イナグ洞
イナグ洞の「イナグ」とは女性を意味する言葉。
現在は落盤のため立入禁止となっているため、洞窟の外から中を覗くだけです。
中には女性を象徴する乳房と臀部に見える形の石があるそうで、安産や良縁を願う信仰の場となっています。
イキガ洞
次に向かうのはイキガ洞。「イキガ」は男性を意味します。
こちらは命の誕生・子供達の成長を願う信仰の場となっているとのこと。
これまで同様川沿いを歩いていきます。
しばらく歩くと、川が流れこんでいく大きな洞窟の入り口に着きました。
ここがイキガ洞です。
洞窟内は暗いため、入り口でガイドさんからランタンを手渡されます。火と灯油の匂いに誘われ、探検するような心持ちに。
洞窟の中へと流れ込んでいく川と一緒に奥へと進んでいきます。
天井からは鐘乳石が伸びており、独特の風景が見られます。
時折、頭上に鐘乳石があったりするので、ランタンで照らしながら慎重に進みましょう。
ツアーで歩くことのできる洞窟の一番奥には、男性の象徴とされている鐘乳石があります。触れて拝むと子宝に恵まれるといわれているそう。
歩いて行くことはできませんが、奥に外へと繋がる穴が見えますね。川が流れ出ています。
洞窟の奥は川の音も空気も清らか。それでいて力強くも感じる、雰囲気。できることならランタンを消して一人佇んでいたかった。
イキガ洞でのツアーも終わり、外へと戻ります。
暗闇から明るいところ、緑の豊富な森に帰る感覚もなんだか神秘的。
ここからはツアーで一番人気という大主(ウフジュ)ガジュマルへと向かいます。
ウフジュガジュマルへ向かう間も見どころがあります。この巨大な岩にできた穴を通って行くわけなのですが……。
写真右の巨大な岩が崩れ落ちてきたところを、写真左のそれほど大きくない岩が受け止めてバランスを保っていたりします。これすごい。
想像もつかないものが自然の中にはありますね。神聖な土地に立ち雨に濡れることで心が浄化されてきているのか、驚きが少しづつ身体のなかに落ち着いて浸透していく感覚があります。
ウフジュガジュマルの手前には人口トンネルがあります。この上は一般車両が通る道とのこと。
ここで「ガンガラーの谷」の名称にもある「ガンガラー」の由来についてガイドさんから説明がありました。昔、この地域に住む人が、この辺りに以前はあった穴に石を投げると、大きな反響音が聞こえてきたそうな。その音が「ガンガラー、ガンガラー」と聞こえたので、「ガンガラーの谷」となったそうです。意外な理由。沖縄の方言かと思ってたぜぃ。
さてさて、トンネルを抜ければウフジュガジュマルとの対面。楽しみです。
高さ20メートルほど、推定樹齢約150年の大主(ウフジュ)ガジュマル
トンネルをでると、大主(ウフジュ)ガジュマルが佇んでいました。
高さは20メートルほど、推定樹齢約150年の精霊が宿るとされる木。
圧倒的な存在感。
ここまでの高さがあるガジュマルの木は県内で唯一とも言われているそう。
上に伸びていっているように見えますが、ほとんどが崖の上から垂れ下がった根。
複雑に絡んだ根は、顔の皺のように過ごした年月を感じさせる。
見上げれば、空からの光と共に語りかけてくれる、そんな佇まい。
このウフジュガジュマルは今もなお成長しているそうです。すごい、地球と一体になっていっている感じがする。
崖の反対側から見るとこのようになっています。素晴らしい風景。
ウフジュガジュマルとの対面を終えて進むと、ガンガラーの谷のスタッフが作ったというツリーテラスに案内されます。森を高台から見渡すことができ、綺麗。
ただ、道路なんかも目に入ってきてしまうのがあまり嬉しくなく、自然ばかりを眺めることにしました。ツアーが終わるまでは、この谷の中での感覚に浸っていたい。
ツリーテラスを後にし、いよいよツアー最後の目的地、武芸洞へ。
古代人の居住跡のある武芸洞
コースも終盤、武芸洞です。
こちらは実際の発掘現場のある洞窟。
約7000年前の土器や、約4000年前の火を焚いた炉の跡、大量のイノシシ骨などが掘り出されたそうです。
約3000年前の石の棺に入った人骨が発掘された場所。今も研究が進められているそう。
驚くのは、発見された化石の多くが地表から数十センチの場所から出てきているということ。まだ掘り進んでいないその下にはなにがあるのでしょう。7000年以上前の歴史が埋まっているのかもしれないですね。
この武芸洞でガイドさんが人類のルーツや港川人について説明してくれます。
古代人の左腕の骨には貝のブレスレットがつけられていたそうですよ。その頃から装飾する文化があったのですね。
ここで楽しかったツアーも終わり。ガイドさんに連れられ、沖縄ワールド側から外に出て解散。
沖縄ワールドはガンガラーの谷の向かいなので、元の駐車場には歩いてすぐ戻れます。
ケイブカフェが気に入った僕ら夫婦は、もう一度ケイブカフェに戻りコーヒーをいただくことにしました。
風化したサンゴで焙煎された豆で入れられた「35コーヒー」。水は玉泉洞の地下水を使っているとのこと。
面白いですよね。通常のコーヒーとは違う独特の風味のあるコーヒーです。豆も売っていたので、友人のお土産にひとつ購入。
ケイブカフェの中を見回しながら、ゆっくりとコーヒーをいただきます。
いやはや、なんとも素晴らしい体験をされていただきました。感謝感謝。
言葉にすることは難しいですが、パワースポットといわれるだけのことはある場所だと思います。この体験は今後忘れることはないでしょう。
沖縄を訪れる方にオススメの場所です。
コメント
こんばんわ。
大自然の神秘というか、畏敬の念を抱かざるを得ないような不思議な光景に(写真や動画を見ただけでも)驚きます。実際、その場に居合わせられたお二人の気もちが直に伝わってきます。
「ガンガラーの谷の入り口にあるケイブカフェです。なんとも素敵な景色に夫婦2人ではしゃいでしまいました」
残り少なくなったですが、いつか私たちも行けたらいいなあー。
id:kame710 さん
自然の凄さを肌で感じるツアーでした。思い出すだけで感動します。
ケイブカフェは本当に素敵なところですので、沖縄を訪れる方には本当にオススメの場所です。
大自然の不思議が沢山詰まっていますね。ちょっと怖いのも事実ですが、歴史が詰まってると思うと一度は行ってみたいものです。2万年前はどうだったのかワクワクしますね。
紫苑 (id:buraxtudo) さん
ありがとうございます。
大自然の神秘に身を任せる素晴らしい体験でした。2万年はどうだったか……僕もそれを考えながら歩いていましたが、壮大すぎて想像力が追いつきませんでしたw