床屋で髪を切ってきました。
ものすごく、短くなりました。
結構長くしていたのですが、中坊かってくらい短いです。
人によっては凹むところなのかもしれませんが、僕は楽しくって仕方ありませんでした。
想像と違うものがでてくる面白さ。
この『自分の基準』を超えてくるヤバさが床屋にはあります。
※ここに書いている『床屋』は1000円カットなど安さを売りにしているものは含んでいません。
床屋と美容室ってどう違うの?
床屋推しな感じで始まりましたが、実は懇意にしている美容室もあります。
床屋と美容室。
バーバーとヘアサロン。
似ているようで違う、美容師の友人を紹介するときに「床屋さんやってる●●ちゃん」って言うと結構怒られる、この二つの違いってなんなのでしょう。
■床屋
- 免許:理容師
- 主な客層:男性
- 目的:容姿を整えること
■美容室
- 免許:美容師
- 主な客層:女性
- 目的:容姿を美しくすること
昨今は男性も美容室に行きますし(前述の通り僕も行きます)、本当にざっくりですが違いを分けるとこんな感じでしょうか。
そしてやはり大きな違いとして、床屋には『顔剃り』があるということが挙げられます。
僕の中では、
- 美容室はこちらの要望プラス素敵なトッピングをつけて気持ちいいところに落とし込んでくれるから気持ちいい
- 床屋は「あ、やっぱりそうだよね」という安心感と「あ、その方向からくるんだ」というトリッキーさを併せ持って店独自のルールで攻めてくるから面白い
という印象。
そして、「失敗したらボウズにすればいいじゃない」という気持ちもある僕は、まだ知らぬ何かを求めて床屋を選択することが多くなっています。
床屋の店ごとの独自サービス・ルール
床屋が面白いのは、サービスやルールが店によって違う、独自のものである、というのが大きいと思います。
頼み方・注文の仕方からその対応と切るまでの流れ
まず、髪を切ってもらう際の頼み方・注文の仕方からそれぞれの店で特徴があります。
取っ掛かりはデフォルトで「どのくらい切ります?」「今日はどのようにしましょう」って聞いてくるところがほとんどでしょう。
美容室との違いは、ここでのやり取りが短いことです。
何度か通っている床屋なら、この場面で伝家の宝刀「いつもの感じで」が使えるのですが、初めての店だとどのくらいと言われても大体はっきりとは答えられません。
それに美容室のように、「ツーブロックで刈りあげるのは低めで全体的にすいてもらう感じで……」と相談するのも微妙。
どのように伝えるか悩んでいると、そのお店のやり方で切り込んできてくれます。
大胆派
- 「刈り上げる?」「つめる?」と聞いてくるパターン(どちらかの選択のみで突き進む。大抵短くなる。)
- 「バリカン使って大丈夫?」と聞いてくるパターン(「はい」「いいえ」の2択。どちらにせよ短くなる。)
- 何を伝えても「はい。はい。はい。」と笑顔で言いながら切り始めちゃうパターン(最後まで笑顔)
慎重派
- 「何センチ切る?」と聞いてくるパターン(センチだと感覚的にわからず、「5センチ」と適当に答えたところ「5センチって相当切ることになるよ」と言われ、「んじゃ、3センチで」と答えたところ、ほとんど毛先しか切ってもらえなかったことがありました)
- 何も言わずに髪型の見本の雑誌を渡してくるパターン(大体角刈りとかパンチパーマとか載ってる古いやつ)
どれも僕が体験したことのあるパターンです。
結果的に、切ってくださる方が得意としている髪型に落ち着くのが面白いところ。
僕はあれこれ言うのは面倒なので、大胆派にガシガシやられるくらいが楽しいです。
接客スタイル
床屋さんは常に客と対峙する接客業です。
その接客スタイルも様々で、大きく分けると2つ。
- 職人気質寡黙系
- 会話優先ワイワイ系
これは床屋さんによってスタイルが分かれます。
職人気質寡黙系
会話をするのは最初と最後だけ。
髪を洗う時や顔剃りの時にも、声はかけずにこちらの身体を触ってたり、手の動きでナビゲートします。
仕事きっちり、丁寧な方が多い印象です。
流れるような仕事に惚れ惚れすることも。
会話優先ワイワイ系
女性が多いのですが、とにかく話しかけてきて気持ちを盛り上げてくれます。
飴をくれたりコーヒーをくれたりと、嬉しい心遣いも多く、一度行くだけで仲良くなれたりします。
床屋さんはご自宅の一階を職場としていることが多いので、何度か行くと家族ぐるみで知り合いになったりも。
個人的には、どちらも好きです。
寡黙で全く話さない床屋さんが、常連の方とだけ饒舌になっているのを見て、びっくりしたりするのも、ありがちなシチュエーション。
サービス
床屋さんのサービスはお店によって様々。
通常の流れとしては、
- 髪を切る
- 洗髪する
- 顔剃りする
- 髪を乾かす
が多いと思います。
それぞれの工程の合間に、お店独自のサービスが入ってきます。
その中でも多いのは、マッサージでしょうか。
組んだ両手で、頭と肩をパコパコと叩くマッサージ。
あれ、気持ちいいんですよね。
レアなところでは、
- 簡単な耳かき
- 鼻毛切り
- 機械でのマッサージ
などがありました。
いろいろなサービスがあるところも床屋の楽しいところ。
さて、冒頭で綴りましたとおり、僕は先日床屋に行ったところ、髪がものすごく短くなりました。
その床屋さんがかなり面白くてヤバかったので、その時のことについて綴ります。
何がでてくるかわからない床屋はやっぱりワンダーランド
先日のこと。
なんとなく行ったことのない床屋に行きたくなり、自宅近くを歩いていました。
すると、今まで気付いていなかった床屋があったので前を通って覗いてみると、お客さんがいないようでした。
こじんまりとした床屋さん。
入ってみようかなと考えていると、丁度、店の扉が開いて、ご主人が外の様子を見に出てきました。
床屋さんらしい白いユニフォームを着た年配であろうご主人。
くしゃっとした微笑みがかわいらしい。
「切ってもらえますか?」とご主人に聞きます。
「ん?」と微笑みながら返してきます。
「やってますか?」と改めてご主人に聞いてみます。
「やってますよ?」と微笑んでいます。
え、なんで?
入り口から、動いてくれない。
入り口で立ったままやり取りしている謎。
微笑んでいるばかりなので、「いいですかね?」と言いながらご主人の横を抜けて入ってみることにしました。
中に入った僕を見てようやく客だと認識していただけたのか、「どうぞ」と椅子に案内してくれます。
微笑んでいてかわいいけど、長い間床屋をやられているような佇まいのご主人。
手際良くケープを首に留めていきます。
「今日は、寒いねぇ」
時々話しかけてくれます。
「冬らしくなりましたね」と答えつつ、どんなタイプの方だろう、と期待が高まります。
「どんな風にいたしますか?」
お、きた。
見た感じ細かく伝えない方が経験からお任せで切ってくれそうな感じ。
「かなり伸びちゃったんで、全体的に軽くする感じで……」
短くして欲しい、と伝えるとスポーツ刈り的なことになるので、ジャブを打って様子見です。
「耳は出す?」
いきなり懐に入ってきました。
「出して大丈夫です」
「じゃ、つめるね。刈り上げないで、ね。」
始まりは難なくスムーズに入りました。
やりとり短いパターン。
ケープも巻き終わって切る準備万端というところで、店の奥から奥さんがでてきます。
床屋さんでよく見られる、
- 旦那さんがメインでカット
- 奥さんが補佐
という陣形。
この流れるような連携を見れるのも醍醐味。
と考えながら待っていると、なんと僕の後ろに立ったのは奥さんでした。
ご主人に僕の要望を確認すると、「今日は休日なのに天気悪くて残念ねぇ」と言いつつ、大胆に髪にハサミをいれます。
今日は髪短くなるな、とわかる一撃。
ご主人は切っている様子をぼーっと見たりと、手持ち無沙汰な様子で店内をうろちょろと歩き回っています。
床屋さんではテレビかラジオがついていることが多いですが、こちらでは何もついていません。
とはいえ、奥さんはおしゃべりタイプでは無く、黙々と髪を切っています。
髪が切られる際のハサミの音だけが響きます。
その静かな空間の中、動き回っているご主人が気になる。
そんなご主人を鏡越しにチラチラ見ていたら、いつの間にか前髪なんかもザクッと切られ、あっという間に切り終わりました。
圧倒的な技術力。
本当にはやかった。
でも、短くなったね僕の髪の毛。これまた圧倒的に。
さて、切り終わったタイミングでご主人が近寄ってきます。
洗髪はご主人の担当のようです。
洗髪用のケープに巻き替えて、頭にシャンプーをかけてくれます。
ここも2パターンありますよね。
座ったままシャンプーか、洗髪台に頭を置いてからのシャンプーか。
洗髪の最中は奥さんが床に散った髪の毛を掃除し、顔剃りの準備をしています。
手際がいいです。
洗髪が終わると、奥さんが温タオルで顔を拭いてくれます。ぐいぐい強め。タオル熱め。
剃りはまずは首の後ろから始まりました。
ご主人の担当です。
剃りは床屋さんの醍醐味ですよね。気持ちが良い。
首の剃りが終わると、椅子が倒されて顔剃りです。
どうやらここから奥さんの担当のようです。
めまぐるしく変わる担当。
顔に温タオルが手際良く置かれます。
が、めっちゃ熱い。
面白くて「うはっ」って笑い声が漏れてしまいました。
あっつ。
まじであっつい!
奥さんには僕のうめきは気持ち良くて出た声に聞こえたことでしょう。
どうやら、やんわり系のご主人に対し、奥さんはぐいぐい系のようです。
熱いタオルに顔が隠された状態の中、視覚が遮られているので耳は敏感になっています。
その耳に、突然テレビの音が飛び込んできました。
ご主人がテレビをつけて見始めたようです。
テレビつくんじゃん。
そして、自由だ。
顔剃りは、これまた素晴らしい技術でした。
僕は肌が弱いくせに髭が固いので、大抵顔剃りで少しは血が出てしまうのですが、結構強めに剃っていたにもかかわらず全く傷ついていません。
ぐいぐい系の奥さんらしく、剃り残しの探し方はなかなか荒っぽく、肌をつねるようにするので痛かったのですが、あまりにしつこくやるので面白くなってこれまた笑いをこらえるのに必死でした。
剃って、つねる。
つねって、剃る。
つねって、つねって、つねる。
つねりたくったところで、終わりました。
顔剃りが終わると、椅子の背を元に戻して、頭と肩をマッサージしてくれます。
組んだ両手で、頭と肩をパコパコと叩いてくれます。
これまでの手際通り、若干荒いですが、それを含めて気持ちの良い感じ。
堪らん。
あー気持ち良いなーと目を閉じ始めたところで、奥さんの手が一旦止まりました。
ん?なんだろ、と目を開けてみると、でっかいマッサージ機を奥さんが持っています。
整骨院で腰に当てているのを見たことあるやつ。
これが、僕の肩に置かれます。
結果、完全に気持ち良かったのですが、見た目通りハードな振動でした。
マッサージ機使ってくれたのは初めての経験。
マッサージが終わると、髪を乾かしてくれます。
床屋のブラシだと丸いブラシでとかしてくれますよね。
ロールブラシっていうんだ。
「お兄さん、モテるでしょ」
髪を整えながら奥さんが話しかけてきます。
「いえいえ、まったくですよ」
「いやー、背も高いし、モテるでしょー」
「いやいや」
無限ループだ。
ウケが良いのかどうなのかわかりませんが、年配の方が良く言うこの投げかけですが、「はい、まぁ」って言うまで終わることのないやり取り。
髪を乾かし終わると、これまた床屋さん特有のヘアトニックを頭皮にふってくれます。
この匂いは床屋に来たことを強く意識させてくれますね。
髪を整え終わって、終了です。
代金を支払って、店を出ました。
面白かった上に、すっきりしました。
やっぱり楽しいなぁ、床屋さん。
何がでてくるかわからないし。
ワンダーランドや。
まとめ
床屋さんがやることって、仕事のいろんなものが詰まっていると思うのです。
接客業であり、プランナーであり、技術職であり、パフォーマーでもある。
髪切って顔剃って、人に刃物をあてるわけだから、いつもスレスレの状態で仕事をしている。
床屋さんに行くと、いつも尊敬します。
それでいて、個人商売であることが多いから、個性がでる。
これが楽しいですね。
ちなみに、別の日に先ほど挙げた床屋さんの前を通ったところ、入り口にご主人が置物のように立っていました。
軽く会釈すると、「どうぞ」と中へと手で案内してくれます。
「あ、いえ。この間切っていただいた者です」と伝えたところ、
「あ〜、そう!」と微笑んでいました。
もしかして。
前回は髪が長すぎたから簡単に入れてくれなかったのかしら。
だとしたら、あの微笑みはすさまじい。
そんな想像ができるのも、床屋さんに行く楽しみなのかもしれません。
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