風呂とその日1日とあいねくらいねなはとむじーく

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風呂が好きです。
突然ですが。

毎日1〜2時間は浸かってます。

実家に住んでいた頃は、僕が風呂に入ると言うと、慌てて家族が先に風呂に入ったくらい。
僕の風呂は長いのです。

「風呂には何かがいる」と友人が言っていたのですが、僕もそれに同感で、何かいそうな感じがしています。
実際に話すわけではないけれど、誰かと話できるような、その誰かは自分なようなそうではないような。
ひょっとして単に内なる自分と話しているだけ?と寂しい感じになりそうですが、もっとなにかポップな存在。

いろいろアイディアが生まれるのも風呂の中だったり、と。

とまぁ、風呂の中にいるポップな彼のことは置いておきまして、僕には風呂に入っておこなう日課があるのですよ。

その日1日を思い返すこと、です。

その日1日を思い返してみるということ

湯船に浸かり「ふはー」と息をつくと、湯気とともに邪念やなんかがふわっと飛んでいってしまうように思えます。

そんな中で思い返す、その日1日のこと。

変わらぬ日常と思いがちなのですが、思い返してみると1日の中で意外といろいろな感情を抱いていたりして面白かったり。

  • 朝出かける時の近所のおばちゃんの挨拶心地よかったなぁ
  • 空が青くてきれいだった
  • 電車で足踏まれて痛かった
  • つか、ハイヒールは痛いんだよ、しかもMではないのですよ
  • つか、踏んでることさっさと気付いておくんなまし
  • つか……

と、負の感情を思い出しすぎるとダークサイドに堕ちて湯気の中でひとり「こーこー(呼吸音)」言うことになりますが、きっと思い出すべきなのは、忙しくても嫌になってても1日の中に少しは良いことがあったはず、ということ。

風が気持ちよかった、とかそんなことでもいい。

良いことがどうしても一つも思い浮かべられなかった時は……
風呂に一度潜って忘れるか、「こーこー(呼吸音)」言うことにしています、僕の場合。

そんなこんなで風呂でおこなっている日課なのですが、最近ちょっと雑なやり方になっていました。
その日1日を思い返すのは思い返すのですが、その日に感じた一番強い感情に支配されて、ちょっとした感情なんかに目を向けることができていなかったのです。

しんどかったー、とか、疲れたー、とか、むかついたー、とか。

1日をひとつの感情でくくってしまっていました。
もったいない。

1日を感情で細分化してみる

このままではいかんと、そんな風に1つの感情に支配されてしまった時には1日を思い返す時に感情で細分化してみることにしたのです。

  • 嬉しかった
  • 楽しかった
  • 悲しかった
  • つまらなかった

などなど、それぞれの感情を抱いた意味合いなんかを探ってみます。
そうすることで、一括りでぼやっと意味もわからなかったことが、それぞれの感情と結びつくことで意味を持ってきたり、と。

腑に落ちる、と言いますか。

この作業を思いついたときに、ふと、「あ、これは『あいねくらいねなはとむじーく』と一緒だ」と思ったのですよ。

あいねくらいねなはとむじーくの意味

小学校の頃、音楽の授業で教わった『あいねくらいねなはとむじーく』。

長い間、メロディーを聴いてタイトルは答えられるのですが、タイトルの意味やどこの国の言葉かはわからないままでした。
言語化しても「あいねくらいねなはとむじーく」とだらっと頭に浮かぶだけ。

そもそも、どこで言葉区切るんだよ、といった感じ。
「あいね・くらいね・なはとむ・じーく」だと長いこと思っていました。

正解は、「あいね・くらいね・なはとむじーく」。
Eine kleine Nachtmusik、モーツァルトの名曲です。


アイネ・クライネ・ナハトムジーク

意味は「小さな夜の曲」。

ドイツ語で

  • 「あいね」は女性形の不定冠詞
  • 「くらいね」は”小さな”という意味の形容詞
  • 「なはと」は”夜”、「むじーく」は”音楽”という合成名刺

となっております。

意味を知ったのは、恥ずかしながら二十歳くらいのときだったと思われます。
長いこと僕の中で「あいねくらいねなはとむじーく」というただの曲名だった言葉に、途端に意味が生まれました
真っ白なものに鮮やかな色がつくような、そんな感覚。

どこで区切るのかもわからなかった言葉のそれぞれに、美しい意味がありました。

そんな風にですよ、なんでもない1日のひとつひとつの感情にも意味が持たせられたらと思うのです。
意味とまではいかなくとも、考えてあげたいな、と。

なんでもないままだと、もったいない気がしまして。
ぼやっと一括りにした1日を分解して意味を探ってみる試み。

その日1日を思い返していると、意外と次の日(明日)のことも考えるようになるのでございます。

そんな、風呂の長い三十路のおっさんの、バスタイムの話でございました。

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